会期終了ギリギリ滑り込みで、渋谷区立松濤美術館の『古道具、その行き先 -坂田和實の40年-』へ。個人的には『細江英公の写真 1950-2000』以来、12年振りに訪れた。茂原(正確には長生郡長南町)の美術館「 as it is 」へはなかなか行く事ができない中、渋谷での開催は非常に嬉しい。個人蔵の中に、白洲正子さん旧蔵や村上隆さん蔵なども数点含み、全部で134点、洋の東西・時代も含め、宗教的なものから日用品まで様々並べられている。一番目の展示室入り口に、A4サイズの出品リストがあり、展示品の横には探さないと見つからない程、絶妙に視界に入りにくい点に番号がふってあるので、古道具の姿とその並びの整然さが際立っている。図録もそうだが、すぐ横にはキャプションを付けないで、観客が自分なりに感じられるようにしてあるみたいで、それはまさに坂田さんがこれまでやられてきた事なのだと思う。私みたいな凡人は、プリントに目を落としている時間が長いことに愕然とした。キャプションも併せ見る事で、より深い味わいを楽しむ事は、もちろん有益な時間ではあるが、いかに自分で考える時間を当たり前に投げているかという事に、肝を冷やした。生で観てみたかった「おじいちゃんの封筒」はやはり素晴らしく、オランダ・デルフト窯白釉壺や皿などの他に、この日特に自分が気に入ったのは、明治時代の紙袋(日本)と昭和のドラム缶蓋(日本)であった。素晴らしい見立ての美を見せて頂いた。