鋼と地金

2013年1月7日

ALCOSO

 古いものを直したり手入れしたりして使うのが、私にとって至高の贅沢である。年始に譲っていただいたドイツの鋏を、人形町「うぶけや」さんで研いでいただく。日本のものは鋼(はがね)と地金(地金)が組み合わさっているそうなのだが、舶来のものは無垢なので、思いっ切りたたいたり曲げたりが出来ないため、調整が非常に難しいとの事であった。錆が多い状態であったのだが、この上なく綺麗にしていただき、その美しい仕上がりに惚れ惚れするとともに、大切に使っていきたいと考える。

服用ブルーム

2012年12月27日

fukuyou

 ほうき草を編み上げた「服払い」。帰宅したら、編み上げ部位を握り、ほうきの腹の部分で撫でつけるようにして服を払う。ほうきの先端は、縫い目や繊維の中に入り込んだ埃や糸くずを払う場合に使う。獣毛の洋服ブラシと違い、静電気が起こらない。こまめな手入れと休養で、美しさと服の「持ち」が全然違ってくる。帰省土産。

as it is

2012年11月20日

sakata-shoutou

 会期終了ギリギリ滑り込みで、渋谷区立松濤美術館の『古道具、その行き先 -坂田和實の40年-』へ。個人的には『細江英公の写真 1950-2000』以来、12年振りに訪れた。茂原(正確には長生郡長南町)の美術館「 as it is 」へはなかなか行く事ができない中、渋谷での開催は非常に嬉しい。個人蔵の中に、白洲正子さん旧蔵や村上隆さん蔵なども数点含み、全部で134点、洋の東西・時代も含め、宗教的なものから日用品まで様々並べられている。一番目の展示室入り口に、A4サイズの出品リストがあり、展示品の横には探さないと見つからない程、絶妙に視界に入りにくい点に番号がふってあるので、古道具の姿とその並びの整然さが際立っている。図録もそうだが、すぐ横にはキャプションを付けないで、観客が自分なりに感じられるようにしてあるみたいで、それはまさに坂田さんがこれまでやられてきた事なのだと思う。私みたいな凡人は、プリントに目を落としている時間が長いことに愕然とした。キャプションも併せ見る事で、より深い味わいを楽しむ事は、もちろん有益な時間ではあるが、いかに自分で考える時間を当たり前に投げているかという事に、肝を冷やした。生で観てみたかった「おじいちゃんの封筒」はやはり素晴らしく、オランダ・デルフト窯白釉壺や皿などの他に、この日特に自分が気に入ったのは、明治時代の紙袋(日本)と昭和のドラム缶蓋(日本)であった。素晴らしい見立ての美を見せて頂いた。

オーバーホール

2012年4月6日

singer

 江東区のミシン屋さんにお願いして診てもらっていたミシンが、2週間程のオーバーホールから戻る。針スキ調整・上軸機構分解調整・全体注油。革ベルトの交換。革ベルトは表裏がある。最初は重めと思えるくらいに張るのが良いそうである。調整を経て、回転する音の綺麗さが格段に違う。ハズミ車のストップモーションも、柔らか且つしっかりとした。縫い目も美しい。丁寧な仕事に大変感激する。

アンインストール

2012年3月26日

tyousei

 一昨年末、クラッシュによりやむなくMacを新しくした時から、複合機との互換性において問題があったので、ドライブをインストールし直したところ、これまで問題の無かったはずの最重要機能であるプリントアウトに関しても全く不調になってどうしようもなくなり、これはさすがに困るということで、サポートセンターと約1時間×2本の電話で色々診断した末、提案できる方法がもう無いと言う事で、アップルに聞いてくれという事になる。アップルの方では、保証期間を過ぎているので、話すだけで4,800円だというので、止しておく。その後、友人のプロフェッショナルな人物に助言をいただいてから、アンインストール・再起動・再インストール・再起動を数度繰り返すも、当初の問題有りの状態を脱せず諦めかけたが最後に、自分のものよりもさらに最新のバージョンの場合は、インストール自体をしないようだ。という事に目をつけて、アンインストールできるだけアンインストールして、その上何もインストールしないという方法に賭けてみたところ、突如プリンターのアイコンが見覚えのないデザインに変形し、すぐさまそのアップデートに誘導され、プリントアウトが無事に復活する。便利な分と比例して、不具合の場合は面倒な事になる。余分なものが入っていてはいけないという事である。余裕があるからといって、余分なものを所有しない事である。余分な糸が入り過ぎていると、よい服にならない。

SCISSORS

2012年1月11日

POSTAL

 京橋ポスタルコの「ハサミ展」。原始技術研究者の関根秀樹氏がコレクションした様々な鋏を展示している。糸切り用のにぎりや、ボタンホール用など、個人的には馴染み深い鋏をはじめ、ロウソクの芯を切るためのものや、飴屋、理髪用、盆栽、練炭、砂糖割り用、切るのでなく音を出すためのものなど。初めて見たものがほとんどであったが、特に「羊毛刈り用」は、大きさも含めて最も印象的だった。展示の他、ドイツ・ ゾーリンゲンはアドラーの鶴型刺繍鋏やドヴォの洋鋏などが販売されている。17日からの、クリエイションギャラリーG8のエキシビジョンも楽しみである。

原形

2011年11月23日

arrow

 学生時分より、いわばブレーンのような存在で良きアドバイス・意見や情報を与えてくれる友人が、引っ越しで不要になるという事で、自転車を譲ってくれた。02年の「デザインの原形展」でも「ヤマジン」モデルが選出された事をはじめとして、あまた高い評価を欲しいままにしている「アロートレーディング」の「クラシック」型アップハンドルである。オプションで付属しない限り、後輪のコースター・ブレーキのみ装備で、街をゆっくりポタリングするのが最も適した乗り方のものであるが、まさに時は、ピストバイクのブレーキ不備罰金刑初事例のニュースが流れた翌日であり、アロー純正の補助ブレーキ(前輪)もパーツが欠品中という程であったので、早速、看板には「自動車」とある、近隣のお店というか作業場に持ち込んで取り付けを依頼した。どこか最寄りの自転車店ではなくこちらにお願いしたのは、譲り受けた帰り道にたまたま通りかかったという事もあるが、素人には到底把握ならびに整理しきれない程のおびただしい数の工具や部品が、何かこの上なく機能的な整然さを持って、出番はまだかと鎮座し、全壁面に収まっているのを目にしたそのときに、自分の目が鋭いという事では全く無しに、大変仕事が素晴らしいだろうという予感めいた印象を自然と抱いたからであった。逆ならよく陥りやすいだろう。つまり、勘としてはあまり良くないんじゃないかと感じたのに、面倒だ。などとそのまま選択を進めて失敗したなという場合の事である。一度預けて再び戻った際には、他の仕事が沢山入って来ていた。自分にはテクニカルタームは分からないのだが、通常のピボットでは車輪に対しアーチサイズが合わず、結果的にはロードバイク用が取り付けられたとの事であった。タイヤも一度外し、ぐらつきを修正して下さったのだが、やはり、自然と流れる様な職人業・プロの技を目の当たりにすると、脳内から何か快感のようなものをもたらす物質が止めどなく溢れてくる感覚を禁じ得ない。その仕事がこの環境を整えたのか、環境がこの仕事を支えたのか。拝見している眼前のその作業風景にすら対価を支払いたくなるようなプロの姿勢と仕事とを獲得・確立したいと考える。

Boom!

2011年10月12日

iBoom!

 ロラン・バルトの仕事を参考に、自分なりに解釈して、スケジュール表フォーマットを良き様に、macで「Boom!」と刷新してみた。どうも時間の使い方が上手くないからだ。出来は良いのではと考えている。ただ、全てはそれにかかっていると言える様な、根本的な原因がもうひとつ存在するので、併せて早急に解決したい。