楽しみにしていた Kousei Werkstatt 『夏宵祭』へ伺い、夏の日々を堪能して来た。どんな季節にしろ、暑いのが嫌だとか寒いのが嫌だとか雨が嫌だとか風が嫌だとかいう言い方が、挨拶のように先に立ち、特異な四季をよりよく楽しみ味わう機会を、言葉からしてみすみす放り投げがちな世の中である。千年猛暑などと言われている今夏が過ぎ去り振り返った時に、最も涼しく美しい瞬間の経験であったという事になるであろう。古い器、古い雑貨、夏野草の鉢植え、三浦半島の野菜、骨董品などの品揃えと、比類なき空間、えも言われぬ設え、香り、音、光と陰など、それらのすべてと季節からくる日本情緒の特質。期間中、宵の口からは飲み物を提供して下さるところ、あとに仕事を残していたので、真面目腐ってお茶をいただいたのだが、赤ワインかお酒のいずれかをいただいていたら、さらに夏宵祭の美を楽しめたのかもしれないと少しだけ後悔する。とはいえ、この上なく涼しげな器と葉が敷かれ提供されたお茶は、目にも大変美しく、且つとても美味しく、深く心に残った。帰りがけ、思いがけず一年振りくらいの知人に遭遇するおまけもついてきた事も含め、スケジュール的に泣く泣く伺わないという可能性もあったところだが、やはり心のままに動いてよかった、実行してよかったという事は確実に存在する。