悲しすぎれば涙も出ないように、あまりに素晴らしい場合は言葉がない。駅のホームからスカイツリーがデカデカと拝める錦糸町は@すみだトリフォニーホール・菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『具象の時代』。官能的でありがらも、一方では目が覚めるような爽快感。具象と抽象のアンドロジーナス。鳥肌の連続で風邪を引きそうな程だ。チケットは随分前に取っていたが、この数日いろいろあった事も関係して、単にこの上ない楽しみだった事を越えて、個人的には意味合いが大きく変わり、まるで自分のための内容に感じられ、それはある過去の時点から既にこういう状況で拝聴する流れに決まっていたかのように思えてしまう。成人式にも出なかった私の通過儀礼なのだろうか。開演直前、近くの席の方が、着飾られて続々と入場されてくるオーディエンスの方々を揶揄するような発言をされていたのが、残念であり悲しく、自分も神経質な時期だったので開演直後その事がとてもとても気になってしまっていたが、『映画「バターフィールド8」 ~ バターフィールド8のテーマ』で菊地さんのサックスが入ったところで全てが吹っ飛ぶ。何か面白くない事があったりしたのかもしれないが、その方も終演時には必ずやとても気持ちのよく幸福に満たされて帰路につかれたのであろうという確信が私にはある。MCにおいても、既に他界されているお父様の教えや、メンバー紹介でのハープ奏者・堀米さんがご結婚されたことについて「受け入れがたい事実であることに」など愛嬌ある枕詞がついていた事、アンコールの『クレイジー・ヒー・コールズ・ミー』の解説等、曲以外の部分でも癒して下さった。いくらでも食べたいメインディッシュの嵐のようなセットリスト。なけなしのお金は、はたいてみるものである。下の写真、すみだトリフォニーホールといえば舟越桂氏の彫刻。