もう長いこと、前を通る度に気になっていたクリーニング店にシャツを二枚お願いした。期待通りの素晴らしい腕前だった。立ち姿とお話しの仕方が凛とされている。大量に預かられた服はきれいに整頓され、同じく沢山のクリーニング済みの服は、密着せず一着一着計ったような、たっぷりの余白をあけて掛けられおり、コートやジャケットなどの重衣料はショップのディスプレイのごとく壁に平行に掛けられていたりする。最初持ち込みの際、入って行くとまず「うちは手でかけるので、少し割高ですよ。」と説明して下さる。それから瞬時に、持ち込んだシャツが元から糊無しの製品という事を分かっていて「糊は無しで?」と聞いて下さったので、あえて糊は付けてもらう事にする。伝票も何もなし。初対面で名字しか聞かれない。中2日で受け取りに行くと、こちらがドアを開けかけたら、もう棚の私のシャツに手をかけていらっしゃる。とうてい私には実現出来ないホスピタリティである。仕事場と家との中間地点、クリーニングをお願いするたびには勿論のこと、ガラス越しにあの風景を見るたびに、服を宝物のように扱うプロの愛と真心とについて、迷子にならない為の地図がそこにある。カウンターには額におさめられた愛猫と思われる写真があった。

