原形

2011年11月23日

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 学生時分より、いわばブレーンのような存在で良きアドバイス・意見や情報を与えてくれる友人が、引っ越しで不要になるという事で、自転車を譲ってくれた。02年の「デザインの原形展」でも「ヤマジン」モデルが選出された事をはじめとして、あまた高い評価を欲しいままにしている「アロートレーディング」の「クラシック」型アップハンドルである。オプションで付属しない限り、後輪のコースター・ブレーキのみ装備で、街をゆっくりポタリングするのが最も適した乗り方のものであるが、まさに時は、ピストバイクのブレーキ不備罰金刑初事例のニュースが流れた翌日であり、アロー純正の補助ブレーキ(前輪)もパーツが欠品中という程であったので、早速、看板には「自動車」とある、近隣のお店というか作業場に持ち込んで取り付けを依頼した。どこか最寄りの自転車店ではなくこちらにお願いしたのは、譲り受けた帰り道にたまたま通りかかったという事もあるが、素人には到底把握ならびに整理しきれない程のおびただしい数の工具や部品が、何かこの上なく機能的な整然さを持って、出番はまだかと鎮座し、全壁面に収まっているのを目にしたそのときに、自分の目が鋭いという事では全く無しに、大変仕事が素晴らしいだろうという予感めいた印象を自然と抱いたからであった。逆ならよく陥りやすいだろう。つまり、勘としてはあまり良くないんじゃないかと感じたのに、面倒だ。などとそのまま選択を進めて失敗したなという場合の事である。一度預けて再び戻った際には、他の仕事が沢山入って来ていた。自分にはテクニカルタームは分からないのだが、通常のピボットでは車輪に対しアーチサイズが合わず、結果的にはロードバイク用が取り付けられたとの事であった。タイヤも一度外し、ぐらつきを修正して下さったのだが、やはり、自然と流れる様な職人業・プロの技を目の当たりにすると、脳内から何か快感のようなものをもたらす物質が止めどなく溢れてくる感覚を禁じ得ない。その仕事がこの環境を整えたのか、環境がこの仕事を支えたのか。拝見している眼前のその作業風景にすら対価を支払いたくなるようなプロの姿勢と仕事とを獲得・確立したいと考える。