前肩と腰の二点で着て、あとは解放というエプロンは、衣服として極めて優れた構造であるという点からも好きなアイテムなので、定番商品化を考えている。こちらは、その開発途上原型を元にオーダーいただいたもので、ネックストラップの長さを変え、素材を身頃と共布製とした。リネン(亜麻)よりも長い繊維であり、絹麻とも呼ばれるほど光沢の美しさを纏うラミー(苧麻)製である。麻は、欧州では新石器時代末期に、中国では紀元前三千年頃に絹織物と一緒に縄状のものが、日本では縄文時代後期の土器に布目のあるものが発見され、昔は、単に布と言った場合には麻織物のことをさした。中でも苧麻は細い糸を作りやすく、高級な織物に使われていた(越後上布、小千谷上布、能登上布 等々/上布は、献上・上納された布や、江戸時代の糸使いの細い織物のことをいった)。柳田邦男『木綿以前の事』によれば、かつて一般的な日本人が、主に麻しか肌につけるものを持ち合わせて居なかった頃に比べて、木綿の登場は、若い人たちの流行にとって珍しいという価値以外にも、からだとの摩擦の快さや肌触りで麻よりも優れ、布の色模様に関して絹階級の特典と思われていた染色性の面でも素晴らしく、麻をいろいろ処理するための二千年来の家具が不用になり、村里には染屋が増加し・・・(略)、人々は一段と美しくなり、生活の味わいが濃やかになってきたことは、椀が白木のものから瀬戸物へ変化したことも同様であったという様な記述がある。現代はどちらの素材も質は大変向上したが(スピード効率化により劣化している面もなくはないと言えるかもしれない)、勿論上記と同じような比較では特性ゆえの優劣もある。同じセルロース分子からなり、化学的には同じものであるはずの、この太古よりの代表的植物繊維同士が、こうも違った性質を持っていることが何より楽しく美しい。麻しか利用出来なかった時代の、寒い冬場の何枚もの重ね着は「太布何枚の寒さ」と表されたという。強く、端正な形を整えるが、一方では非常に皺がちであるこの友の、最新の良いところをこれからも発見していきたい。

