勝負の3センチ間

2011年12月18日

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テーラリング私塾の日。裏地据え。脇入れ。肩入れ。襟作成。襟付け。アイロンを乗せている時間が多ければ多い程、良い服へと繋がる。脇・肩入れともに、本縫い後、縫い代を割る際に、各所の形を出す様にプレスする。襟芯は、左右でたてよこ地の方向が同じになるように、後ろ中心で付き合わせに切り替え、二枚で取る。カラークロスに乗せ、返り線にミシンをかけた後、ハ刺しで刺していく。この仕事の最大の特徴(特長)として、身頃よりとても長い襟をつけるのだが、その余りは肩縫い目から前側2〜3センチ間に集中させないと意味がなく、それは失敗となり、せっかくの効果を出す事ができなくなる。スパイラル状にしつけをした後からげていく。裏側は、身頃の芯や余分な縫い代が、襟の返り線に掛からぬ位置まで整理して千鳥がけをする。そしていよいよアイロンワークでのプルダウンに入る。脇でよこ地の目を通す事と、このプルダウンで服を落とす(と同時に前肩の形と、襟の快適さも創出する)ことで、服の良し悪しが天地の差を生む。落語も服も「落ち」は大変重要である。

見返し据え

2011年11月27日

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私塾の日。見返し端の縫い代は身頃に比べて1ミリ程多く差をつけて切る(返り止まりより上のラペル部分)。しつけは、ずれないように二重にする。ミシンで縫ったら、身頃側だけ襟付け止まりに切り込みを入れ、表に返った時の控える側を考慮して、縫い代の割り加減にもやや差をつけてアイロンをかけ、糸で手かがりをした後、ひっくり返す。返り止まりより下は、身頃が上に乗るように。上のラペル部分は、見返しが上に乗る様に、充分にプレスする。「白も」でハナを押さえ、返り線もしつけで止める。その後、白も二本取りで、内ポケットの袋布を芯地にとめ付ける。この日はその他、(特に日本人の)肩についてのお話、胃腸系と呼吸系に効く体操2種のお話、絵を描く事の重要性のお話などを拝聴する。学生のはじめの頃は、実際の仕立てよりも、絵を描く方が圧倒的に好きであったが、途中から絵を描く事がデザイナーではないと強く思い始めた事も手伝って、最近めっきり描かなくなっていた。自分では、頭に描けているつもりなので、時間の節約と得意になっていた節があるかもしれないが、確かに、描かなくなっていた事で、見えなくなっていたものが多いし、想像の範囲を限定したくないという想いで、描かない様にしていたはずが、むしろ逆のマンネリズムを招いていたかもしれないと痛感し、また描こうと考えている。意外にも、先生の他に以前より「絵を描け」と口酸っぱく唱えていた人物が一人。ど素人である母親であった。経験を積む事で、見えなく(見たくなく)なっている事、聴こえなく(聴きたくなく)なっている事が増えているようだ。先生に見習い身につけたきは、技術以上にこういった点や、自分の頭で考える・試す。という姿勢なのである。

変わらないもの

2011年11月13日

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いよいよ寒くなり始め、朝夕などは張りつめた冬の気配を感じ、感覚が研ぎすまされ、装いの楽しみや美味しい食べ物、寒さに耐えること・暖をとって暮らす事などにまつわる、暑い季節とはまた違った興奮が到来したかと思えば、11月未だ残暑かと思わせてみたりと、師走に向かって気候も忙しく、毎年のことかもしれないが、非常に丁寧に計画的に生活されている方々からすれば、衣や暖房等の準備も万端なのだが。というところでしょうが、無意識の中で困り果てたいのかという程、様々な事にズレてしまっている自分としては、備えをしっかり構えて生きられている人々をこの上なく尊敬しております。日本晴れ日曜日、私塾通い。作業を開始する前に、先生も関係された書籍を拝読しての質問をする。袖口の仕立て、スティフカラーの糊、塹壕用故のトレンチコートのディテール、モーニングの尾のボタンについてと仕立て、テイラーメイド、カスタムテーラー、フラワーホールと菊穴など。服づくりのテクニックは言うに及ばず、それとは別に(いや、二つは密接に関係するかもしれない)やはり人としての振る舞いや作法・礼儀等、個人的にも乱れに乱れている部分で大変勉強になり、背筋が伸びる。作業の進度としては、ややスローになっているが、独学で進めるならわざわざ先生に教えを乞う意味も無い訳で、且つはじめの一着という事もあり、各工程ごとに非常に細かくうかがい、教えていただく。見返しと裏地を裁つ。

SMCのリセット

2011年11月7日

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朝から、新調してほぼ1年になるmacがネットに一切繋がらない状態に陥る。ネットワーク診断等あれこれやってみても全く改善されない。モデムの表示も異常はないので、試しに同じ配線をWindowsノートに繋いでみるとしっかりネットに通じる。這う這うの体で、たまらずサポートセンターに電話をしてあれこれお話した後、本体の故障を疑う次第になり最終的に1つだけ試して結論を出すという事になったその方法が、コンピューターに強い人ならば、まず試してみる基本的な事項である「SMCのリセット」であった。SMC (System Management Controller) はコンピュータのすべての電源機能を制御する部分であるが、簡単に言うと、一旦システム終了した後、本体に繋がっている線と言う線(といっても、3本ほどであるが)を抜き、15秒待って(電話の向こうのサポートセンターの方が数えて合図を下さる。)、抜いた線を再び差し込み、立ち上げる。特に今の時期に修理となったら、大変困るなぁと思いながら起動音を聞いた後、まずはMailを立ち上げてみると、先程試しに携帯から送った空メールが届く。つまり無事オンラインになり、続けてSafariの平穏が戻った事も確認でき、ホッと胸を撫で下ろすも、このような事で些少ながらも心を乱してしまう事実に、有益なものを得たのと併せて、この数年で失った・もしくは減少した何かの存在を感じながら、こうして午前を棒に振るも、自分の頭についても「SMCのリセット」のような作業が時には必要であるなとの考えに至り、無駄でも無かったかとも思う。玄人からすると取るに足らないトラブルだろうにも関わらず、仕事とはいえ、最後に優しく「良かったです」と言って下さったサポートの方への感謝の念が絶えない。

ラノリン

2011年10月23日

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霜月も目前、霜降の頃にしてやや汗ばむ日曜日の私塾通い。もう少し進めて望む予定であったが、「芯据えはこの1本!」という最重要の箇所を、一度チェックしていただいてから、作業を進めた。縫い目1本、テープ1本にも大切な意味と大変な効果があり、ひとつひとつ良い服に繋がる手応えを積み上げていく。裏地の取り方、縫い代の取り方なども含めると、同じアウトラインの型紙であっても、全く違うものが出来上がるのだから、際限なく奥が深く、面白くて仕方が無い。途中、ウール生地についての話になり、トップダイ、ヤーンダイ、ウールダイ等の染色やエイジング、そして仕上げの話題から「ラノリン」という言葉が登場した。特に女性なら美容用品として耳にした事があるかもしれない羊毛脂の事である。例えば、コムデギャルソンがパリに出て行った最初の頃発表した事のある(うろ覚えで、自身は無いが。)全く脱脂していないセーターがあったが、一般にはウールは服地としての製品に仕上げられていく過程で、必要あって脂抜き工程を経るのであるが、最終的に羊毛本来の性質や良さを帯びるようにラノリンを付加するそうである。やはり、元々自然と必要なものであるから含まれている訳で、全く抜いてしまうと上手くないのであろう。染色に話を移すと、現在はどうかわからないが、昔のハリスツードはウールダイだったそうである。通常はトップダイである。より上等なのがヤーンダイで、さらに上がウールダイという事だ。なぜ良いか?ウールというのは、そこから「カード→ヤーン→トップ」と進んで布地になっていくのだが、最初に染める事により、カード以降の工程で不要物が搾り取られていくことになり、素晴らしい風合いを醸し出すという事になるのだそうである。このような染めの段階や、エイジング(葡萄のように当たり年など)の年代を好き好きに選びミックスして生地から作るような文化が主流であったら、どんに豊かであろうと妄想するのであった。前日の10月22日22時22分からは、アンダーカバーの最新コレクションを配信で観賞した。どなたか著名人のブログにもあったが、内容も素晴らしかったのにも関わらず、パリで発表しなかっただけで、これまで必ず掲載されていた某コレクションサイトに取り上げられないという事であったらしい。門外漢の推論だとしても、アンダーカバー社側がわざわざそう意図する(掲載を遠慮する)とも思えなく、これもモード世界のいち性格なのだと今日のところは考えた。

秋思雲髻を抛ち

2011年10月9日

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早朝十月の光も冷まじく、巷では三連休の中日にあたる日曜午後より私塾通い。本縫いにおけるアイロンワークを中心に作業を進める。いせによる孕みは、誰にでも比較的分かりやすい概念であるが、伸ばすことによって立体を作るというのは、より高度かつ着心地の面でも合理的な考え方である。1日の終わりに、とても疲れを感じるという事の大きな要因のひとつは、服の悪さだと思っている。カットの良くない服は、たとえ軽かろうが、めちゃくちゃに疲れる。一方、ずっしり重くても、良い服は疲れにくいと考える。現在、先生がお客様から預かっておられる服が掛かっていたのだが、下手をすると50年くらい前に仕立てたものだという事で、非常に驚いた。最近新しく仕立てたものだと思ったからだ。大変綺麗に着られるお客様だという事とはいえ、本当に状態が、そしてものが良い。真にからだに合っているということも、劣化しにくい一要因であろう。元々の持ち主の方ではない、別の御方が着られるために、なかなかに大きなお直しをしている途中のものであった。先生のお店は、年明けで2代・100周年を迎えられる。本当に良いものだけを100年作り続ける、尊敬という言葉では全く十分に表せない、とてつもない事である。「世の中のゴミはデザイナーが作っている。/完全に遊んでますよね。」という著名な方の言葉がずっしりくる。

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私塾通い。自分が進めているジャケットの補正と切り躾打ち直しをしながら、その問題点は分かったところで、別に先生に見せていただいた「 とあるパターンオーダーのための、ジャケット試着時の事例 」写真から、着用者の体に対して、服がどのような問題点を有しているかを考察するという機会が大変勉強になった。以前教えていただいた概論が、些少ながら身に付いている事が嬉しくもあった。かつては、見えていなかったものが見える、その人にしか見えない景色を捉えられる視力というのは、服づくりに限らずとも非常に重要な能力であり、根拠である。サイズは着用者に合っていて、構造バランスは平均的なジャケットを、しっかり正しく肩に乗せて羽織り、真っすぐ立った状態を、できるだけ真っすぐな構図で前後左右から撮影したものである。一番大きな要のバランスから見ていき、はっきりした問題がすぐに分かりやすい好例とも言えたが、とはいえ、きちんと分析する事はそうそう容易い事では勿論無い。前と後ろ、左と右、上と下等々で様々な問題が同時多発的に起こっているが、第一段階としてまずそれらを認識し、つづいて実際にそれら数々共存する問題を効率よく(蛇足的な欠陥が生まれぬためにも)最小限の手数で補正する方法の選択と実行には、また別の難しさがあるだろう。まさに絶対的に経験がものを言う仕事である。服づくりを勉強し始めた頃は、街ですれ違う人々が着ている服のフォルム・色彩・構造の面白さや分量だけを見ていたが、今では着心地に影響する服の乗り方をも注目するようになっているし、また、見えるようにもなった。背広を始めとして、日本における各アイテムの呼び名には諸説あるのは周知の事だが、先生が天皇陛下とのお話から当時調べられた「チョッキ」については、岩波の広辞苑にはこう書いてあるのを拝見した。「チョッキ(jaque フランス・ポルトガル)洋服の上衣の下に着る短い胴着。(以下省略)」ここではポルトガル語と思われる外来語をそのまま読んだパターンが想像せられる。ちなみにという事で調べられたという、以下についても拝見した。「ズボン(jupon フランス)洋袴。(以下省略)」こちらの方が、より読みやすい。

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秋気身に入む爽やかさとは言いがたく蒸し暑くなった私塾通いの日曜。よりよくプルダウンが効くように、じっくりアイロンを当て直し、再度フィッティングして補正する。その効果充分有って、随分良くなったが、本縫いでは「ツキどめ」を抱かせる事にするとはいえ、やはり後ろ身頃の衿みつは1センチ上げる事になる。何度も言っているが、毎回唸るのは、アイロン操作の見本として、先生が素手で生地を撫でていったときに、本来であればアイロンによる熱・水分(蒸気)・時間が伴わないと変形しない生地が、あたかもそれらの要素が加わった様に動く様がはっきりと見て取れる、その効果的且つ効率的な当て方・手つきである。さて、ボタンの位置が難しい問題であった。ジャケットの丈、自分の体の縦方向の寸法、ポケットの位置、ラペルの返り止まり位置等々との兼ね合いで、良いも悪いも含めれば、無限のバランスが存在する。生地の色や分量もともなって、なかなか瞬時に判断するのは難しい。先生の商品サンプルを数点何度か試着させていただき、そのボタン位置と照らし合わせ、数値的配分理論も考慮し、決定する。このあたりも、服づくりにおいて、いくらでも楽しめる要素の1つである。「自分が(ボタンを)かけるべき位置が存在するから、その1点を探す。」休憩時間には、先生のお時間の使い方を質問したり、昔フランスに発注されたオリジナルボタン、今はもう無いフォーマル用のボタンや珍しい美錠などを見せていただく。それと、昔、紳士の社交たるゴルフをプレイする時に着用したジャケットやニッカボッカ等を作る為の、相当古い生地提案パンフレットと言おうか、小冊子のようなものを拝見したのだが、当時の名人・いわゆるプロプレイヤーが数人、モデルとして各々様々なスイングをしている写真が1枚ずつ載っており、横に各プロによるその技術の解説が英文テキストとして添えられているという、着用している服・スイングによるきれいな皺は勿論、スワッチのページだけカラーだったり、使われている紙質や印刷等も含め、大変洒落ている素敵な物であった。電子化は大変便利であるが、これはKindleやiPadでは体感できないものである。ボタン付けの玉どめに関しても教わったので、早速試してみたい。ツレデは「糸=thread=スレッド」から。