銀座クリエイションギャラリーG8で開催中である、個人的に東京で最も良いブランドの一つであると考えるポスタルコの「ポスタルコ ホイールプリンター」展に併せて開催された、クリエイティブサロンに参加した。ポスタルコのプロダクト全般をデザインするマイク・エーブルソンさん、グラフィックデザインのエーブルソン友里さん、ポスタルコの誕生間もない時期より関わり、その活動や主旨を日本語として適切に置き換えられる役割を担っていらっしゃるライターの佐伯誠さんの御三方をゲストに、ポスタルコのプロダクト・グラフィック・ことば等についてのお話を拝聴する。極めて個人的な、しかも長期に渡って継続的な「興味」や「疼き」みたいなものを、自分で考えて、大切に育て、あきらめずに発展させていく事によって、ひいては人が喜ぶ、幸せになるものや考え方をつくり出していると感じる。例えばそれは、時には「魚の口」であったし、またある時には「運ぶという行為」や「橋」などであって、今回のテーマになっているのは、パリの路上で見た「車輪の跡」であり、その興味はずっと継続され今に至り、ホイールプリンター製作の佳境にあっては、訪れた歌舞伎の中で役者が冠っていた(たぶん)天蓋のようなものさえも車輪に見えてきてしまうという、なぜ惹かれているのかわからないような、無意識に取っておきたくなるような断片に対する熱が、生活を変え得るものづくりへの道程となっている。織り機の姿にも影響を受けたかもしれないというプリンターの完成には、以前からの興味であり、すでに徹底的なリサーチの末、別の製品としても完成している「魚の口の構造」も助けとして不可欠であったということで、すべての事は関係している。ディテールとして、印刷の「圧」を調節するプレスの役割を果たす部分に、肘当てクッションが付いているが、マイクさんがおもしろく冗談ぽくも本気っぽくも「(とにかく)クッションの付いたものがつくりたかったので(笑)」と仰ったところは、個人的には大変印象深く、最も共感した部分のひとつであったが、一事が万事、単にそのパーツを付けたかったという子供のような微視的な興味を採用しつつも、実は徹底的なリサーチに基づく合理的と言っても良い根拠に裏付けられている事は、ポスタルコの全てに通低していると考えられ、邪推ではあるが、それは例えば、マイクさんの子供時代のイタズラへの罰として、母親から命じられた「その悪い事にまつわる徹底的なリサーチを含むレポート20ページ」の提出から既に始まっていた。これまでのプロダクトの解説や、日本の職人技なればこその製品化の実現、CASSANDREのポスターなどから出航し、DMでも包装でも捨てずに取っておきたくなる様な素敵なグラフィック・ワークスを手掛ける友里さんの考え、友里さんのおばあさんを交えてのロゴマーク完成までの経緯、音楽、3D、オーガニック、食べ物のように作る。等々の話があり、終盤は、佐伯さんがマイクさんに内容を明かさずに用意したキーワード(焼きイモ/roast sweet potato、イタズラ/mischief、はしっこ/margin、ゴチャゴチャ/messy・・・ここで時間切れ。)をお題に、抜き打ち即興的なトークが展開され、最後には半券の番号により、豪華ポスタルコ製品が当たる抽選会という、観客もパネラーもまだまだやりたくなるような楽しさと、勿論ものづくりの観点からも大変に有意義なイベントであった。「日本語が聞き取りにくいかもしれませんが。」という、自分よりよっぽど綺麗で流暢なマイクさんの挨拶で始まって、これだけの考え方を母国語でない言語、しかも日本語でもって、本質的に解説できるという点も、あまりに自然なので見逃しがちだが、とんでもなく凄い事であり、また人柄の成せる業である。これまで自分の興味に対して、他人がちょっと共感してくれないくらいで、いじけてきた耐久性の無い薄いガラスのハートについて、思いっきり楽しく反省させられた、させていただけた一夜であった。そんな痕跡を車輪が印していってくれた。

