芯地

2011年7月10日

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limartannex

七月文月最初の私塾通いの日であった。ジャケットのフォルムを構成するのに、非常に重要な役割を担う芯地づくりを教えていただいた。有り物(既製)ではなく、型紙に合わせたオリジナルの芯を使う事で、服がよりフィットし、より立体的に仕上がるのを助けてくれる。そしてまた、こういった作業も私を魅惑するもののひとつなのである。ウールの台芯と化繊のバス芯を合わせる。昔ながらの、馬の尾毛が緯糸に入ったバス芯(漢字表記ならば文字通り「馬尻毛」。先生による)も見せていただいたが、その毛の張りと言ったら、表地から飛び出してくる可能性が高いほどなので、あえて使用することもしなかった。ダーツ部分の縫製には、昔のものだという電動ミシンをお借りしたのだが、これが家庭用だと、なおかつ嫁入り道具的な立場のものだと聞くにつけ、驚かずにはいられないほど上等(高機能)のものであった。ボビンの構造も本格的で、それ故、昨今の一般的な家庭用よりも精度の高いジグザクステッチをかけられるし、縫う音がいかにも素晴らしかった。重量がとんでもないというのが、唯一欠点と言えばそうである。柔らかくソフトに。服の内側に向かうにつれ大きく大きく。そして体が動く事を考えながら。学生時代、カメラワークの教諭が「人間の眼は適当にできている」とおっしゃった。勿論、ここで言うのは「いいかげん(悪い意味での)」という意味ではない。「良い加減(良き補正をしてくれるという、その事をふまえる)」という意味の方である。ハ刺しの糸の引き具合なども、この適当さであるべきである。先生の仕事といい、昔のクチュールの裏側といい、まさにその言葉が当てはまると考える。これは、その哲学の表れが成せる業である。指針・標。
授業後、出来得る限り日陰を選びながら「 lim Art annex 」を訪れ、大沼茂一さんという方の写真展『 東京都 』を最終日にて観賞する。このエリアは、ブックショップ、ファッション、雑貨、アンティーク、パーツセンターなど、見所は沢山あるのだが、一刻も早く自部屋にてシャツの水分を絞りたく、急ぎ帰路についた。