私塾通いの日曜日。お盆とあってか、駅前の喧噪は控えめ、対して日差しは手厳しく遠慮なく。同クラスの生徒さんが欠席されたため、最重要項目『プルダウン』製法を贅沢な一人授業で受ける。肩入れでは、ぐし糸を入れて、いせ分を殺すというのは何度もやってきた事ではあるが、自分がやっていた内容より遥かに厳密に、何段階にも分けて時間をかけてじっくりと、真に肩甲骨のハリを出していく。使用生地の物性・風合いも大いに関係してくる。例えばカシミヤの様な、いせが入りやすい柔らかい生地の方が容易に思えるが(実際、大部分はそうであるが)、いくつかの要素を連動させていって得たい最終形にもっていくところまで考慮すれば、むしろそういった生地の方が難しいとも言える。今回の使用生地は逆に、しっかりとしていて強いので、いせは柔らかい生地に比べれば入りにくいとはいえ、肩を入れた時点で(布地そのものの力・縫い目の力で)かなり前肩の運動量たるふくらみが認められる。顎ぐりと衿との空間『三日月』の開き具合いに配慮して型紙をカットし、衿芯を同地の目で左右裁ち接いだものをカラークロスにのせて裁ち、<ネックポイント(NP)〜後ろの衿みつ>と<ゴージの端から顎ぐりカーブに入ったあたりまで>は同寸で衿を平らに付けていく。残りの<顎ぐり〜NP>つまり、NPのごく近くで、「あれ?間違ったかな?」と普通なら思ってしまうような距離を、良き手加減でいせて、細かすぎず荒すぎず止め付ける。ここから『プルダウン』。個人的には、服づくりの工程やディテールには、芸術的な香りを嗅ぐ事がしばしばだが、プルダウンの「衿・肩・袖回りが一体となって連動する」様は、その最たるものの一つである事に疑う余地はない。例えば、キモノスリーブやラグランで、前方性を出す為に前袖山切り替え線を伸ばすとか、パンツとかそういうごくわずかな例を除いて、「伸ばす」という行為は基本的には「あ〜あ、伸ばしちゃった・・」というような否定的な、もっと言えばタブーとされているが、ここでは逆に、進んでその一見タブーのベクトル方向へ「伸ばす」のである。そして、ふさわしい手つきや布地にたいする熟知が助けてくれれば、頑張らなくても簡単に伸びてくれるのである。なぜなら生地がそうなりたがっているから、そして何より理に適っているからと言えるのであろう。伸ばしながらも、衿のある部分はいせ気味にしたり、首が長い場合・短い場合などアイロンの当て方を分けて形づくっていく。ここも伸ばしちゃうの?という部分も伸ばしても、結果は、衿は浮かないどころか吸い付き、それでいて首に食い込む訳でなくて、しっかりゆとりが確保されていて疲れない。連動して鎖骨付近のくぼみ、そして前肩の運動量となる立体感も同時に出るという芸術品なのだ。勿論、まだまだ理論的にも技術的にも理解しきれていないので、今日のところは簡単な記述にとどめ、今後の勉強の糧としたいと考える。










